毎月2回(1回3時間)、誰もが相談に来て良いという「研究相談日」を設けている。相談内容も相談者の経験年数も問わない。一人(あるいは一グループ)30分の枠で、私の院内LANのスケジュールに自由にアポを入れてよいという仕組みだ。
今日は、NICUから2件の相談があった。一つは、カンガルーケア(註1)に引き続き、直接授乳をすることを積極的にすすめていきたいと思うが、このような取り組みが研究にのなりうるのかという相談。もう一つは、気管内チューブ固定方法の変更に伴う効果について、すでにデータをとれているので発表したいという相談だった。
これまで、カンガルーケアー実施に伴う授乳のルーチンは、瓶授乳が先で、その次に直接おっぱいからの授乳という経緯をたどってきたが、この順番性にエビデンスはないという。また、小さいbabyの吸綴力と嚥下能力には不安があるので、35週にならないと授乳を開始していなかったという。その両方の壁を一気に越え、35週に満たなくてもカンガルーケアーをしながら直接授乳の可能性を探っていきたいのだという。先行文献もないとのことなので、何か、新しい発見があるのではないかとわくわくし、相談にきたスタッフと一緒に研究デザインを考えるのはとても楽しかった。
さて、もう一方の、気管内チューブ固定方法の変更に関しても、最初は変更に伴う効果が現れたら非常に興味深い研究になるだろうと思って聞いていた。しかし、詰めて聞いていくうちに、どうやら、変更前に実施していた当院での方法が、すでに他の病院では行われておらず、「ええ??聖隷浜松病院ってそんなケアをやっているの」と言われかねない方法だとういうことがわかった。(彼女たちの名誉のために書いておくが、その方法をとっていたからといって、患者に危害があったとか、不安を与えていたとかというものではない)。それがわかって、この研究はすぐに却下した。
自分たちが、他の病院を見学したり学会に行ったりして新しい知見を学んだとき、それがよさそうだということで自職場に導入した後には、以前のやり方と比べてどうだったのかを評価することは大事だ。しかし、他がすでにやっていることを当院で始めたからといって、その経過や効果を発表しても何ら新しい知見が提案されるわけではない。学会というところは、たとえ5mmでもいいから全国に先駆けて明らかになったことや、示唆を与えられるような報告を行うところだ。そう説明すると、みんなちょっと残念そうな顔をしたが、すぐに納得してくれた。嬉しかったのは、「じゃあ、もっと他に、現場の中から研究の材料を探してきます」とすぐに前向きになってくれたこと。
すぐに次に向き合える。だから、聖隷浜松病院の看護は強い。
註1 カンガルーケア・・・特にNICUなどで、お母さんの裸の胸に赤ちゃんを抱っこさせる保育方法。今では普通分娩で生まれた母子にも用いられている。母子間の愛着形成や、児の心拍安定などの効果がみられている。カンガルーのお母さんとその袋に入った子を連想さえるので、この名前がついた。