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「ガン病棟」上巻・下巻
(ソルジェニーツィン著 小笠原豊樹訳 新潮文庫, 1971年)
手元にある上下巻は、紙が変色し古本の臭いがする。
第10刷で1975年に刷られたものだ。
当時からの紙カバーをつけてあるが、
そこに印刷されている有名な書店は、倒産して存在しない。
1975年は、祖父が胃がんで亡くなる前年にあたる年。
私は中学生。
もしかしたら、自分で買ったのではなく、母が購入したものかもしれない。
いずれにしても、2,3度読んだ本なのだが、
今になって読み返すと、いろいろなことに気づく。
当時のソビエト連邦にある病院の話なのに、
今、看護管理者として読むと、はっとする件が多いのだ。
たとえば、
「この病棟では、手術室勤務の看護婦を別にして、六十名の患者さんに日勤の看護婦は
三名です。夜勤は二名です。」(上巻p.11)
「患者に病名を教える義務は、私たちにはありません。
でも病名を聞いて気が楽になるなら申し上げましょう。リンパ肉腫です。」(上巻p.76)
「ベッドの回転率をよくする必要があるのだが、そのためには、
病状が必ず好転すると約束されていない患者を退院させなければならない。」(上巻p.91)
「制度そのものが無意味だったんだ。
無料だとなると、患者はなんでもかんでもやたらに薬を持ち帰って、
あとで半分以上捨ててしまうんだ。(中略)初診料を取ることは絶対に必要だ」(下巻p.196)
現在にも通じるような、医療制度・環境に関する課題がたくさん描写されている。
また、ノーベル賞作家であり亡命作家であり、
数奇な人生を歩んだソルジェニーツィンの「体制」への強い反発が感じられる。
(2009年7月18日)